『古事記』を読む

文學と逃げず左右思想を持ち込まずスピに走らず学問的蓄積を飛び越えず内在する論理を信じ通説の否定をためらわず

古事記ブックガイド4 中村啓信 訳注『古事記』(現代語訳付き)

 

新版 古事記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 古事記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

 

 

 『古事記』を一冊手元に携帯するにはどれがいいか。私が迷わずお薦めするのは、この一冊です。

 もちろん、リファレンスとしては、

倉野憲司・武田祐吉 校注『日本古典文学大系 古事記祝詞』(岩波書店、オンデマンド版二〇一七年、初版一九五八年)

西宮一民 校注『新潮日本古典集成 古事記』(新潮社、新装版二〇一四年)

山口佳紀・神野志隆光 校注『新編日本古典文学全集 古事記』(小学館、一九九七年)

取りあえず手元においておきましょうということになるのですが、携帯用には文庫本が一番です。それに、上記のリファレンスを手に取るような方なら、私に薦められなくてもとっくに持っているはずですし。

 

 で、文庫ですが、講談社学術文庫は三分冊だし、岩波文庫には漢字だけで書かれた本文がついていません。現代語訳だけのものは定説がない現状にあっては訳者の現代語訳を鵜呑みにすることになるので論外です。

 

 ということで、中村啓信博士の角川ソフィア文庫古事記』一択となります。その上で、次田真幸訳注が気になる方は講談社学術文庫を、倉野憲司博士の『古事記』をコンパクトに携帯したい方は岩波文庫を、それぞれ買い増せばいいと思います。

 

 中村博士の『古事記』は、「天地初発の時」が「天地(あめつち)初めて発(ひら)くる時」になっているなど、問題もありますが、現代語に問題のない『古事記』が現状ひとつも存在しない以上、本書をオススメできない理由にはなりません。註釈は拙Blogを読めばいいわけですしw 。というのは半分冗談にしても、本書であれば、原文がついているので、もし気になる箇所があれば、自分で原文に立ち返れるわけです。

 

 他にも、ルビのふりぐあいといい、博士の熱い解説といい、さすがは角川(今はKADOKAWAですが)という納得の一冊です。

 

一冊だけ携帯するならのオススメ度★★★★★(5つが最高)